——(2025)最高法知行終959号
近日、最高人民法院の知的財産権法廷は、発明特許権無効行政紛争に関する控訴事件を審結した。本件は、無効宣告手続において特許の進歩性を判断する際、「原理が同一」であることのみをもって直接又は安易に当該特許技術案が自明であると推定することを避けるべきであること、また同一の特許権について繰り返し無効宣告請求が提起された場合には、審査過程において先行決定に係る認定をより慎重に取り扱う必要があることを明確にしたものである。
衡某公司は、特許番号が20061006****.1であり名称が「磁気反発型浮上装置」である発明特許(以下、係争特許と略称する)の特許権者である。瑩某公司および宏某公司は、それぞれ2024年6月8日および9月6日に係争特許権について無効宣告請求を提起した。国家知識産権局はこれらを併合審理し、2025年2月5日に審査決定(以下「被訴決定」と略称する)を下し、すべての請求項が進歩性を欠くことを理由として係争特許権を全部無効とした。衡某公司はこれを不服として一審法院に上訴したが、第一審法院はその請求を棄却した。衡某公司は不服として、最高人民法院に上訴した。
二審において、被訴決定のほか、2015年から本判決日までの間に、国家知識産権局は計10件の無効宣告請求に対して9件の審査決定を下し、いずれも係争特許権の有効を維持していた。
最高人民法院は次のように判断した。進歩性の判断において、仮に保護を求める技術案と最も近い先行技術とが同一の自然法則又は科学原理に由来する場合であっても、両者の具体的実現方式にはなお実質的差異が存在し得るし、技術的効果もそれぞれに優劣や特徴があり得る。したがって、進歩性判断に際しては、「原理が同一」であることのみをもって直接又は安易に当該特許の技術案が自明であると推定することは避けるべきであり、係争特許と最も近い先行技術との間における、解決しようとする技術課題、採用された技術手段および達成された技術的効果等の点における相違および関連性を重視して審査・判断すべきである。たとえ両者が同一の原理に基づくとしても、異なる技術課題を解決するために異なる具体的な技術手段を採用し、かつ異なる技術的効果を得ている場合において、当該相違に係る技術的特徴が当業者にとって当該技術課題を解決するための慣用手段又は公知常識であることを証明する証拠がなく、また先行技術において当該技術課題の解決に用い得るものとして開示されていないときは、「容易に想到し得る」「容易に得られる」などの理由により安易に当該特許技術案の進歩性を否定すべきではない。
係争特許の請求項1は、「基座の環状永久磁石+上方の単一浮上永久磁体」という構成を採用し、環状永久磁石の上側環状表面と浮上永久磁体の下側磁性端との磁極を反対とする特定の設定により、環状永久磁石中心外側の特定領域に生じる磁力を利用して、浮上永久磁体を基座上方の所定位置に浮上させるとともに、垂直方向における重力の平衡および転倒防止効果を同時に実現し、さらに水平制御装置を設けることにより、浮上永久磁体を基準位置に安定して浮上させ、かつ自由に回転させることを可能としている。一方、証拠2-1は、「上方の環状永久磁石+下方の浮上体+追加の電磁石」という構成を採用し、環状永久磁石に磁気吸引力と反発力の双方が存在する特性を開示しているが、その全体的な技術案は、環状永久磁石の磁気吸引力と電磁石とを組み合わせて制御可能かつ調整可能な吸引型動的浮上を実現するものであり、中心外側の特定領域における磁気反発力は主として緩衝作用を果たして浮上体の衝突を防止するものであって、当該反発力を利用して浮上体の重力平衡を実現するものではなく、また当該技術案は水平方向の運動を制御する必要もない。係争特許と証拠2-1との相違は、単なる相対的位置の簡単な調整にとどまるものではなく、磁気浮上の実現方式、具体的技術手段および達成される技術的効果のいずれの点においても相違が存在する。これらの相違技術特徴に基づき、係争特許の請求項1が実際に解決する技術課題は、浮上体を垂直方向において静的に平衡させ、かつ転倒を防止し、さらに水平方向に自由回転させることができる別の技術案を提供することにあると解される。先行技術証拠2-2は、環状永久磁石の磁力線分布の規則のみを開示しており、具体的な応用方式は開示していない。また、先行技術証拠2-3において開示される水平サーボシステムは、別の技術案に係る磁気反発型浮上システムにおいて水平方向のずれを補正するものである。以上の先行技術はいずれも、垂直方向の電磁制御を廃し、環状永久磁石の中心外側の特定磁気反発領域を利用して浮上体の重力を平衡させ、さらに水平制御装置を設けて水平方向の運動を制御することにより、垂直方向の平衡および転倒防止効果を同時に得るとともに、浮上体に自由な水平方向回転運動を行わせるという技術的示唆を与えていない。
最高人民法院は二審判決において、同一特許権について無効宣告請求が繰り返し提起される場合には、審査過程において先行決定に係る認定をより慎重に取り扱う必要があることを特に指摘した。各無効宣告請求に対する審査手続はそれぞれ独立した法的手続であり、後続手続において依拠される証拠および理由は、先行手続と同一又は実質的に同一であってはならず、各案件において当該案件の証拠および理由に基づき独立して判断を下すべきであり、先行決定に当然に拘束されるものではない。これは手続の適正原則および個別審査原則の必然的要請である。しかしながら、先行決定は法的効力を有する行政文書として、後続手続においても一定の法的意義を有する。まず、「最高人民法院による特許権侵害紛争案件の審理における法律適用に関する若干問題の解釈(二)」の第六条は、特許審査ファイルが請求項解釈の根拠となり得ることを明確に規定している。先行決定における請求項の解釈や特許権者の陳述等に関する記載は、審査ファイルの構成部分に属する。次に、特許無効宣告請求の審査手続において裁量の余地が存在する争点、例えば「当業者」の認識水準の画定や技術的示唆の有無の判断等については、先行決定によるこれらの認定は絶対的拘束力を有するものではないが、客観的に審査基準を示すものであり、特許権者および一般人に合理的な予見可能性を形成させる。当該後続審査において同一又は類似の技術課題および法律争点に直面し、先行決定と実質的に異なる認定を行う場合には、より一層慎重であるべきであり、既存の裁量基準からの逸脱の正当性および必要性を全面的かつ慎重に評価し、理由付けの十分性を確保しなければならない。本件においては、複数の先行決定における引用文献は、環状永久磁石の特殊な磁場分布や、磁気反発力又は吸引力により重力を平衡させることで磁気浮上を実現し得るという基本原理をすでに開示していたが、最終的には発明の着想又は具体的技術案の相違等を理由として、係争特許が引用文献に対して進歩性を有すると認定されていた。それにもかかわらず、本件の被訴決定は、公知常識に関する証拠による裏付けもなく、十分な説明も行われておらず、かつ従前の審査基準とも整合しない状況において、係争特許の核心的発明思想に係る相違技術特徴について「容易に想到し得る」「容易に得られる」と認定しており、説得力を欠くものである。以上により、二審判決は一審判決および被訴決定を取り消し、再度の決定を命じた。
本件二審判決は、先行する無効宣告請求審査決定の法的意義について深く解明したものであり、専利制度の信頼性を強化するとともに、審査基準の統一性および予見可能性の維持にも資するものである。
ソース:最高人民法院知識産権法廷
https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-5492.html