——(2024)最高法知終126、127号
近日、最高人民法院知識産権法廷は、優先権に関する2件の発明専利権無効行政紛争事件に対し第二審判決を下し、発明専利の部分優先権の判断基準を明確にした。
米国某公司は、名称が「拡張アップリンクのためのMAC多重化及びTFC選択手順の方法及び設備」であり、専利番号が201010157063.Xである発明専利、および名称が「拡張アップリンクのためのMAC多重化及びTFC選択手順の方法、WTRU及び基地局」であり、専利番号が200680014600.7である発明専利(以下、本専利と総称)の専利権者である。米国某公司は、本専利について3件の外国優先権を主張している。
2020年5月15日に、某想公司は、本専利が進歩性を有しないことを主な理由として、国家知識産権局に本専利権について無効宣告を請求した。米国某公司は、本専利が証拠5(以下、第1優先権書類と称する)、証拠6(以下、第2優先権書類と称する)に基づき優先権を享有できると主張した。某想公司は、本専利の請求項2、4、6、12、14、16、18及び24が優先権を享有できないと主張した。2021年1月に、国家知識産権局は、無効宣告請求審査決定(以下、被訴決定と略称)を下した。本専利権の有効性を維持したが、本専利の請求項2、4、6、12、14、16、18、24が証拠5及び証拠6に明確に記載されておらず、第1優先権と第2優先権を享有できないため、専利法第29条の規定を満たしていないと認定し、そして、これに基づき、関連請求項の進歩性を評価した。米国某公司は、これに不服して、本専利権の有効性を認めるうえ、被訴決定における優先権に対する誤った認定を是正するよう求めて北京知識産権法院に訴訟を提起した。
第一審において、米国某公司は、当業者が優先権主張文書から本専利の専利請求の範囲に特定された技術形態を直接、且つ一義的に確定できることを証明するために、本専利の出願日前に開催されたTSG RAN WG2会議における2つの草案書類と2005年6月30日に公表された3GPP標準という3つの証拠を第一審法院に提出した。第一審法院は、米国某公司が提出した証拠により、本専利の関連請求項に特定された技術形態が第1優先権日及び第2優先権日に直接、且つ一義的に確定できる技術情報に該当することを証明できず、米国某公司の主張が成立しないと判断し、米国某公司の訴訟請求を棄却した。米国某公司は、第一審判決に不服して、上訴を提起した。
最高人民法院は、第二審において、以下のように判断した。優先権が成立するか否かを判断するには、後願の専利請求の範囲に特定された内容が先願の出願書類からが直接、且つ一義的に確定できるか否かを審査すべきである。専利請求の範囲に複数の請求項が含まれ、又は1つの請求項に並列し且つ互いに独立した複数の技術形態が特定された場合、優先権を主張できるか否かをそれぞれ判断して確認すべきである。従って、独立請求項が優先権を主張できる場合であっても、その従属請求項に付加的な技術特徴がさらに特定されて、この2つの請求項の保護範囲が異なるようになって異なる技術形態となる場合、該従属請求項が優先権を主張できるか否かを法により調査して判断すべきである。
本件において、第1に、紛争優先権文書である証拠5及び証拠6にE-TFCを選択するときにヘッダ情報及び他の制御シグナリングオーバーヘッドが記載されたが、当業者は、証拠5及び証拠6のこの部分の内容がE-TFCの選択時にスケジューリング情報などの制御情報をさらに暗示することを直接、且つ一義的に確定できない。第2に、米国某公司が提出した証拠により、第1優先権日及び第2優先権日において、MAC-eヘッダにスケジューリング情報が含まれることが、当業者が直接的に、且つ一義的に確定できる技術情報に該当することを証明するには不十分である。従って、本専利の関連請求項が第1優先権及び第2優先権を主張できるという米国某公司の上訴は、成立しない。
優先権制度は、専利出願人に対し、異なる国で専利を出願する際に利便性を提供するための制度である。優先権を主張できるか否かを判断するとき、優先権主張の基礎となる先願と同一の主題に属するか否かを実質的に審査する必要があり、これにより、出願人が優先権制度を通じて、優先権日以降に行った発明創造を係争専利権の技術形態に加え、不当に先願の出願日を取得し、ひいては不当な利益を獲得することを回避する。本件は、部分優先権の判断基準を明確にし、類似の事件において参考になるものである。
ソース:最高人民法院知識産権法廷