専利無効手続における専利権者の支出は一般的に専利侵害事件における権利維持のための合理的な支出に該当しない

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[ 2024-03-27 ]

裁判要旨

専利権侵害紛争事件において、専利権者が係争の専利無効宣告手続で発生した費用を権利維持のための合理的な支出として請求した場合、一般的に支持されない。

キーワード

専利 権利侵害 無効宣告費用 権利維持のための合理的な支出

事件の経緯

上訴人の遼寧省某電気公司と被上訴人の丹陽某電気公司、原審被告の南通某電気公司の特許権侵害紛争事件は、特許権者が丹陽某電気公司で、特許番号が201611245881.9で、名称が「三角立体巻鉄心変圧器用バージャンクションスイッチ」である特許(以下、係争特許と略称する)に関わる。

丹陽某電気公司は遼寧省某電気公司が製造及び販売し、南通某電気公司が販売した関連製品が特許権を侵害したと主張し、江蘇省蘇州市中級人民法院に訴訟を提起して、遼寧省某電気公司に侵害を停止し、丹陽某電気公司の経済損失75万元、権利維持のための合理的な支出11万元を賠償する判決を下すことを請求し、南通某電気公司に侵害を停止し、上記の賠償について連帯責任を負う判決を下すことを請求した。

第一審法院は、被疑侵害製品が係争特許権保護範囲に入り、侵害を構成し、遼寧省某電気公司が被疑侵害製品の生売を停止し、丹陽某電気公司の経済損失40万元と権利維持のための合理的な支出11万元(丹陽某電気公司の特許無効手続きにおける特許の有効性を維持するための支出10万元と本事件における権利維持のための合理的な支出1万元を含む)を賠償するよう判決し、南通某電気公司に被疑製品の使用を停止するよう判決した。

遼寧省某電気公司は不服として、最高人民法院に上訴し、被疑侵害製品が係争特許権保護範囲に入ていなく、一審で認定した賠償額が高すぎると主張した。

最高人民法院は、2022125日に一審における遼寧省某電気公司の侵害停止、40万元の経済損失賠償に関する判決項目を維持し、遼寧省某電気公司が丹陽某電気公司に権利維持のための合理的な支出2万元を支払うよう改めて判決した。

裁判意見

最高人民法院第二審は、一審判決において特許権者の訴訟手続きにおける合理的な権利維持支出に誤りがあると認定した。

まず、現行の専利授権、権利審査制度の有限性に基づいて、1つの専利権が付与される時に必ずしも専利法の規定に合致しない状況がすべて発見されるとは限らない。そのため、専利法第45条には、「国務院専利行政部門が専利権の付与を公告した日から、いかなる単位又は個人が当該専利権の付与が本法の関連規定に合致しないと考える場合、専利再審委員会に当該専利権の無効宣告を請求することができる」と規定されている。

第二に、専利権者は法により、自分が専利を実施、許可または他人が専利を実施することを禁止する権利を享有し、その権利によって相応の経済的利益を獲得または予期することができる。この経済的利益を維持するために、専利法は専利年費を納付しなければならないことを規定しており、これは専利権の存続を維持するための必要な支出であり、専利権者の他人が専利権に対して無効を提起したために支出した代理費を含む必要な費用も、専利権の存続を維持するための必要な支出に属する。

また、いかなる単位又は個人も専利権の無効宣告を請求する権利があり、専利権者無効宣告を提起した単位又は個人に専利権者が専利権の有効性を維持するために支出した必要な費用を支払うよう要求することができなく、専利権侵害手続きにおいて被疑侵害者側が前記規定のいかなる単位又は個人の一員であり、区別がない。

最後に、専利法第65条第1項は、「……賠償額には、権利者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的な支出も含まなければならない」と規定している。これにより、合理的な支出の発生は違法な権利侵害行為を制止するために発生した費用であることがわかる。専利無効宣告請求は請求人の正当な権利行使であり、専利権者に権利維持費用を発生させる不法行為ではなく、無効宣告を提起することは、権利侵害を訴えられた側が専利権者が提起した専利権侵害訴訟に対抗する合法的な手段である。

したがって、被疑侵害者が無効訴訟を提起したから、民事訴訟手続きにおいて専利権者が無効訴訟手続きで支出した関連費用を支払うよう要求することができない。

同時に、専利権侵害紛争訴訟手続と専利権無効宣告手続は2つの異なる手続であり、一定の相関性があるが、専利権無効宣告手続において当事者が支出した費用を専利権侵害紛争訴訟手続において合理的な支出として支持することは適切ではない。

要するに、専利権者が専利権侵害紛争訴訟手続における支出した権利維持のための合理的な支出は、一般的に当該専利権侵害紛争訴訟手続における専利権者が被疑侵害者の違法行為を制止するために直接発生する関連費用であると認めるべきである。関連専利無効宣告手続において発生した費用については、無効宣告請求人が被疑侵害者であるか否かにかかわらず、一般的に専利権者の権利維持のための合理的な支出の範囲に該当しない

ソース:最高人民法院知識産権法廷

https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2725.html