知的財産権侵害紛争と技術秘密侵害紛争を同時に提起した場合 の重複起訴の認定と法律適用

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[ 2023-10-19 ]

--(2023)最高法知民終240号

最近、最高人民法院知識産権法廷は、技術秘密侵害紛争案件に対して終審の裁定を下し、第一審法院が重複起訴を理由に下した起訴却下の裁定を取り消し、第一審法院で審理するよう命じた。当該案件により、『「中華人民共和国反不正競争法」の適用に関する最高人民法院のいくつかの問題の解釈』第24条は、主に知的財産権侵害紛争と反不正競争紛争の中で権利侵害者が民事責任を重複して負うことを回避する認定問題を解決するものであり、起訴却下の根拠ではなく、この条項を適用するときには、一般的に当事者の訴訟請求を却下する判決を下すべきであることを明らかにした。当該案件は、同じ権利者が同じ権利侵害者に対して知的財産権侵害紛争と技術秘密侵害紛争をそれぞれ提起した場合、重複訴訟となるかの判断について一定の参考意義がある。

浙江の科技公司は、第一審法院に、曹氏が前職員であり、在職中あるスマート音声認識システムコンピュータソフトウェア(以下、係争権利ソフトウェアと略称する)の開発に参加し、ソースコードにアクセスすることができ、離職後、杭州の知能科技公司に勤務し、この公司が販売したコンピュータソフトウェア(以下、被疑侵害ソフトウェアと略称する)は係争権利ソフトウェアと高度な類似性があると訴えた。また、浙江の科技公司は、曹氏と杭州の知能科技公司が共同でその所有している技術秘密を侵害したとして、第一審法院に、曹氏、杭州の知能科技公司の技術秘密侵害行為を直ちに停止し、連帯賠償責任を負うよう判決を請求した。

浙江の科技公司は、曹氏、杭州の知能科技公司を技術秘密侵害で起訴すると同時に、第一審法院に、曹氏、杭州の知能科技公司が、係争権利ソフトウェアに対する複製権と修正権を侵害したと訴えた。

第一審法院は、審理を経て次のように判断した。コンピュータソフトウェア著作権侵害紛争の案件において、すでに被疑侵害ソフトウェアの一部ソースコードファイルは浙江の科技公司の係争権利ソフトウェアのソースコードファイルと類似していると認定し、本件の紛争はコンピュータソフトウェア著作権侵害紛争の案件の中で審理されるため、『「中華人民共和国反不正競争法」の適用に関する最高人民法院の若干の問題の解釈』第24条の規定に基づいて、浙江の科技公司の起訴を却下する裁定を下した。浙江の科技公司は、この判決に不服し、上訴した。

最高人民法院の第二審は、本件のポイントは、重複起訴となるか及び第一審法院が本件に対して実質的な審理を行うべきかであると判断した。

重複起訴となるかについて

『「中華人民共和国国民事訴訟法」の適用に関する最高人民法院の解釈』第247条第1項の規定に基づいて、重複訴訟となるかを判断するには、前訴訟と後訴訟の当事者、訴訟請求、訴訟内容を比較して、原因、事実の類似点と相違点を分析することによって訴訟内容の類似点と相違点を判断し、前訴訟の判決結果が後訴訟に与える影響を考慮し、特に、後訴審判の判決結果が前訴審判の判決結果を否定することを避けなければならない。本件の技術秘密侵害紛争は、別件のコンピュータソフトウェア著作権侵害紛争の当事者と同じであり、訴訟請求も基本的に同じであるが、両案件の原因、事実、すなわち訴えられた侵害行為が異なる。本件における権利侵害行為は、曹氏が秘密保持義務に違反し、浙江の科技公司の技術秘密を披露、使用し、杭州の知能科技公司の浙江の科技公司の技術秘密に対する使用を許可し、杭州の知能科技公司が曹氏が秘密保持義務に違反することを知っていても、浙江の科技公司の技術秘密を取得して使用したことである。また、別件における権利侵害行為は、曹氏、杭州の知能科技公司が浙江の科技公司の許可を得ず、権利ソフトウェアを複製、修正したことである。したがって、本件と別件の訴訟内容は異なる。また、浙江の科技公司が提起した2つの訴訟の根拠となる権利は異なり、後訴訟で前訴訟を否定する可能性はない。浙江の科技公司は、本件においてその所有した技術秘密に基づいて権利を主張し、別件においてその所有したコンピュータソフトウェアの著作権に基づいて権利を主張し、対応する当事者の権利と義務の関係が異なるため、本件の曹氏、杭州の知能科技公司に対する技術秘密の侵害の認定にかかわらず、別件の判決結果と矛盾することはなく、すなわち、本件に対して実質的な審理が行われても「後訴判決結果が前訴判決結果を否定する」ことはない。要するには、本件は重複起訴とならない。

第一審法院が本件に対して実質的な審理を行うべきかについて

『「中華人民共和国反不正競争法」の適用に関する最高人民法院の若干の問題の解釈』第24条の規定

「同一の侵害者が同一の主体に対して同一の時間と地域範囲で実施した侵害行為について、人民法院はすでに著作権、専利権または登録商標専用権の侵害などを認定し、民事責任を負うように判決し、当事者がまた当該行為で不正競争を構成することを同一の侵害者に民事責任を負わせるように請求した場合、人民法院は支持しない」この条項の目的は、主に知的財産権専門法と反不正競争法との関係を明確にし、民事責任を重複して負う認定問題を解決することにある。すなわち、人民法院がすでに関連知的財産権専門法に基づいて権利侵害になったと認定し、民事責任を負うことを判決した場合、当事者がまた同一の権利侵害行為が不正競争となることを理由に民事責任を重複して負うと請求した場合、人民法院は当事者の訴訟請求を却下することを判決しなければならない。コンピュータソフトウェアの著作権侵害紛争案件において、曹氏、杭州の知能科技公司が権利侵害となるかの認定は、本件の技術秘密侵害の審理と認定に影響しない。民事責任を重複して負う可能性があるかどうかは、実質的な審理を行わなければならない。そのため、第一審法院は、浙江の科技公司の訴訟請求に対して実質的な審理を行わなければならない。

 

ソース:最高人民法院知識産権法廷

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