発明構想の相違する特徴の認定に対する影響

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[ 2023-07-20 ]

「発明構想が各技術手段の結合にあり、従来技術には直接または暗黙的にこれらの結合について教示しない だけでなく、このような結合によって生じる技術的効果も開示していない場合、相違する技術的特徴を特定す る際には、このような技術手段の結合を全体として考えるべきであり、単一の技術手段の違いを相違する技術 的特徴を認定する基本的な対象とするのは適切ではない」。 

 

事件の紹介 

 

上訴人の欧瑞康紡績有限及び両合公司(以下、欧瑞康公司と略称する)及び国家知識産権局は、被上訴人の浙 江越剣知能装備有限公司(以下、越剣公司と略称する)との特許権無効行政紛争事件において、北京知識産権 法院が 2019 年 5 月 24 日に下した(2018)京 73 行初 787 号行政判決に不服して、当院に上訴した。


欧瑞康公司は、上訴において、1.原審判決の取り消し、2.国家知的財産権局が下した第 32984 号無効宣告請求 審査決定(以下、被訴決定と略称する)を維持すことを請求した。事実と理由の一つ:(一)原審法院が認定 した相違する技術的特徴に誤りがある。技術方案の技術的特徴を区分する際には、相対的に独立した技術的機 能を実現できる技術ユニット、即ち搬送装置の設置を技術的特徴としなければならない。 国家知的財産権局は、上訴において、原審判決を取り消し、被訴決定を維持し、越剣会社の訴訟請求を棄却す ることを請求した。その中の 2 つの事実と理由の 1 つ:(一)訴訟決定における本特許と証拠 1 の相違する技 術的特徴の認定において、本特許の発明構想と実質的な貢献、即ち異なるタイプの搬送機構を組み合わせて使 用したことを顕示したことは、不当ではない。証拠 1 の 2 つの実施例による教示は一致しており、即ち 1 つの タイプの搬送機構のみを採用する。本特許の従来技術に対する改良点は、単独の 1 つの搬送機構のタイプに対 して選択を行うことにあるのではなく、異なるタイプの搬送機構を組み合わせて使用することにある。

 

争議焦点

 

本件の争点の一つは、(一)原審法院が認定した相違する技術的特徴が正しいかどうかである。 

 

二審法院は次のように判断した。 

進歩性判断においては、通常、まず最も近い従来技術を確定し、それから保護を求める発明と最も近い従来技 術の間に存在する相違する技術的特徴を分析し、その相違する特徴の保護を求めている発明において達成で きる技術効果により発明が実際に解決する技術問題を確定する。最後に、上述した実際に解決された技術問題 から、保護が求められる発明が当業者にとって自明であるか否かを判断する。保護を求めている発明の最も近 い従来技術に対する相違する技術的特徴を判断する際には、その発明の発明構想から、その発明と最も近い従 来技術との間に存在する技術的差異を確定する。この発明の発明構想が対応する各技術手段の結合にあり、従 来技術には直接または暗黙的にこれらの結合について教示しないだけでなく、このような結合によって生じ る技術的効果も開示していない場合、相違する技術的特徴を確定する際には、このような技術手段の結合を全 体として考えるべきであり、単一の技術手段の違いを相違する技術的特徴を認定する基本的な対象とするの は適切ではない。

 

本件において、原審法院は、本特許と証拠 1 または証拠 2 の相違する技術的特徴は、本特許の第 3 の搬送機構 がクランプ搬送装置であることのみにあり、欧瑞康公司と国家知的財産権局は、異なるタイプの搬送機構を組 み合わせて使用すべきである、即ち搬送機構の全体的な設置を相違する技術的特徴として主張している。 

 

これに対して、本院は、次のように認定した。 

まず、本特許明細書の記載によると、本特許の証拠 1 に対する改善点は、巻取搬送機構とクランプ搬送機構の 2 種類の異なるタイプの搬送機構を組み合わせて、新しい糸搬送機構を構成して、糸に対する高品質の変形と 処理を実現することにある。具体的には、本明細書の段落[0011]に記載された内容によれば、第 1 搬送機構 と第 2 搬送機構を巻取搬送機構として設置して、糸を変形及び引張領域において案内するとともに、損傷する ことなく糸を後処理領域に案内し、さらに搬送装置をクランプすることによって、糸張力を後処理領域で一定 に保つことができ、巻取交換中に後処理領域内の弛みを招くことがないようにする。これにより、本特許の発 明の構想は、異なるタイプの搬送機構の組み合わせ配置、即ち第 1 の搬送機構と第 2 の搬送機構を巻取搬送機 構とし、第 3 の搬送機構をクランプ搬送機構とすることにより、「糸を損傷することなく後処理区に案内し、 糸張力を後処理区で一定に保つことができ、巻取交換筒の過程で弛まないことを保証する」という技術的効果 を実現することであることが分かる。 

 

次に、証拠 1 は偽撚り変形機を開示し、その明細書に開示された第 1 実施例における 3 つの供給装置はいずれ も巻取搬送機構であり、第 2 実施例における 3 つの供給装置はいずれもクランプ搬送機構であるため、証拠 1 における第 1、第 2 実施例において開示された糸搬送装置はいずれも単一タイプの搬送機構の組み合わせで構 成され、異なるタイプの搬送機構を組み合わせて配置した供給装置の教示はなく、異なるタイプの搬送機構を 組み合わせて配置することによって達成できる技術的効果も開示されていないので、本特許と最も近い従来 技術の異なる技術的特徴を確定する際には、本特許の異なるタイプの搬送機構の組み合わせ配置を一つの全 体として考えるべきである。 

 

最後に、欧瑞康公司が二審で提出した「現代変形糸加工」という本には、「糸搬送装置、糸条の接触面及び巻 取角などを細かく最適化することは、安定した高速加工と高品質製品を得るために非常に重要である」と記載 されており、供給装置を構成する各搬送機構間は相互に独立しておらず、搬送機構のタイプと工程配置関係な ど、いずれも最終製品の品質及び効率に重要な影響を与え、これにより、本特許の供給装置を構成する各搬送 機構間の緊密な協力関係も実証され、本特許と最も近い従来技術との異なる技術的特徴を認定する際に、本特 許の異なるタイプの搬送機構の組み合わせ配置を一つの全体として考えなければならない。 

 

以上より、本特許の証拠 1 に対する相違する技術的特徴は、第 1 の搬送機構と第 2 の搬送機構がそれぞれ巻取搬送機構として構成され、一方、第 3 搬送機構は、クランプ搬送機構として構成される。また、証拠 2 は偽撚 り変形機を開示し、その 3 つの搬送装置はいずれも巻取搬送機構であり、同じ理由に基づいて、本特許の証拠 2 に対する相違する技術的特徴も前記と一致する。原審法院は本特許の発明構想から出発せず、本特許の 3 つ の搬送機構の内在的な協力関係及びそれがもたらす技術効果を無視し、本特許の異なるタイプの搬送機構の 組み合わせ配置を 1 つの全体として考えず、不当に各搬送機構を単独で区別技術特徴を構成するかどうかを 判断する基本的な対象としたが、このような認定には誤りがあり、当院はそれを是正する。欧瑞康公司と国家 知的財産権局の上訴主張は成立し、当院はそれを支持する。 

 

ソース:IPRdaily

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