最高人民法院知的財産権法廷の典型的な判例(2022)

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[ 2023-06-21 ]

典型的な判例の積極的な役割をさらに総括し、発揮し、知的財産権の保護に確実に力を入れ、市場の公平な競争秩序を維持するため、最高人民法院知的財産権法廷は2022年に審決された3468件の技術類知的財産権及び独占事件の中から20件の典型的な判例を精選して発布した。

その中で、以下の5編を選んで整理して、参考まで提供する。

 

専利民事事件

 

1.中国初の医薬品特許リンク訴訟事件【中外製薬有限公司と温州海鶴薬業有限公司が特許権保護範囲に入るかを確認する紛争事件】

 

事件番号(2020)最高法知民終905docx

 

事件の紹介

中外製薬有限公司は専利法第76条第1項に基づいて北京知的財産権法院に医薬品特許リンク訴訟を提起し、温州海鶴公司の「艾地骨化醇軟膠嚢」ジェネリック医薬品技術案が係争特許請求の保護範囲に入ったことを確認するよう請求した。一審法院は中外有限公司の訴訟請求を棄却する判決を下した。中外製薬有限公司は不服して控訴した。最高人民法院二審は、温州海鶴公司が保護範囲が一番広いの請求項に対して声明を出しておらず、声明及び声明根拠を適時に上場許可所有者である中外製薬有限公司に通知しておらず、その行為は不当であり、批判すべきであり、ジェネリック医薬品の技術案が特許の請求項の保護範囲に入るか否かの判断については、原則としてジェネリック医薬品申請人の申告資料を根拠として比較評価をしなければならない。比較の結果、係争ジェネリック医薬品技術案は請求項の保護範囲に入っていない。従って、控訴を棄却し、原審判決を維持すると判決した。

 

典型的な意義

本件は中国初の医薬品特許リンク訴訟事件である。中国の医薬品特許リンク制度は初めて建てられ、まだ探索段階にあり、本件の判決は医薬品特許リンク制度の実践初期に現れた新しい問題に対して立法目的に合致する探索的な法律の適用を行い、国内外のメディアと医薬界の普遍的な関心と広範な好評を受けた。中央放送総局は第1時間に報道し、「新時代の法治推進2022年度10大指名事件」に入選した。

 

2.「伸縮縫合装置」標準必要特許侵害事件【徐氏、寧波路宝科技実業集団有限公司と河北易徳利橡膠製品有限責任公司、河北冀通路橋建設有限公司の特許権侵害紛争事件】

 

事件番号(2020)最高法知民終1696docx

 

事件の紹介

徐氏は、特許番号が200410049491.5であり、名称が「特大耐撓変櫛型橋梁伸縮縫装置」である特許の権者である。係争特許は交通運輸部が発表した「単位式多方向変位櫛形板橋梁伸縮縫装置」業界の推薦性基準の標準必要特許である。特許権者の徐氏及び徐氏が法定代表者を務めた係争特許の独占被許可者の路宝公司は、冀通公司が平讃高速道路工事において、易徳利公司が上記基準に基づいて製造し販売した伸縮縫合装置を使用し、両公司は係争特許権の侵害を構成したとして、河北省石家荘市中級人民法院に両公司に権利侵害行為の停止と、共同で損害賠償をするとともに権利維持のための合理的支出300万元を求める訴訟を提起した。一審法院は、易徳利公司、冀通公司が係争特許権を侵害したと認定し、易徳利公司に経済損失及び権利維持のための合理的な支出10万元を賠償するよう判決した。徐氏、路宝公司は不服として控訴した。最高人民法院二審は、係争特許は標準必要特許であり、推薦性基準には係争特許技術案、特許番号及び権利者の連絡先が明確に開示されており、路宝公司は2016年に易徳利公司に係争特許権侵害の疑いがあると書簡で警告したことがあると認定した。易徳利公司は係争特許の存在を明らかに知りながら、積極的に特許許可を求めず、再び許可を得ずに係争特許を実施し、主観的に明らかな過ちがある。従って、権利者の300万元の賠償請求を全額支持するよう判決した。

 

典型的な意義

本件二審では、標準必要特許の権者に過失がないこと、特許実施者に明らかな過失があることを認定した上で、権利者の賠償主張を全額支持した。標準必要特許の侵害事件における損害賠償責任を確定する際に、当事者の過失を重点的に考慮することを明確にし、善意の行為者を保護する司法政策の方向性を浮き彫りにした。

 

3.「動的暗号USB線材」実用新案特許侵害事件【深セン市租電智能科技有限公司と深セン市森樹強電子科技有限公司などの実用新案特許権侵害紛争事件】

 

事件番号(2022)最高法知民終124docx

 

事件の紹介

租電公司は、専利番号が201720131230.0であり、名称が「動的暗号USB線材」である実用新案専利の権利者である。租電公司は森樹強公司などが権利侵害行為を行ったとして、広東省深セン市中級人民法院に提訴した。森樹強公司などの抗弁によると、租電公司は同日、技術案が実質的に同じ係争実用新案専利と関連実用新案専利を出願し、その関連専利権はすでに無効宣告され、同じ理由に基づいて係争専利権も無効すべきであるため、租電公司の訴訟請求を棄却すべきである。一審法院は、上記2つの専利技術案が実質的に同一であり、係争専利権が明らかに無効になるか、または無効になる可能性が高いと認定し、租電公司の訴訟請求を棄却する判決を下した。租電公司は不服として控訴した。本件の二審期間中、森樹強公司は係争専利に対して専利権無効審判請求を行った。最高人民法院二審では、係争専利権の安定性に疑問または争議がある前提で、後続の審理手続において複数の選択可能な処理方法が存在する場合、人民法院は適切に処理することができると認定した。本件は明らかにされ、双方の当事者は専利権の安定性問題に対してそれぞれ自発的に相応する将来の利益補償承諾をし、最高人民法院は基本的な事件の状況、事件の証拠及び双方の承諾に基づいて、「先行裁断、別途起訴」の処理方式を採用し、一審判決の取り消し、訴訟請求を棄却した。

 

典型的な意義

本件は係争専利の行政ルートによる権利確定手続きがすでに起動した前提で、人民法院は初めて双方の当事者が権利確定手続きの結果の不確実性に対して将来の利益補償の承諾を自発的に行うよう誘導を試した。裁判は、専利侵害事件において、係争専利権の安定性に疑問があり、または争議がある場合、公平と誠実さの考慮に基づいて、人民法院は当事者が将来の利益に関する補償承諾または声明を自発的に行うことを励まし、誘導することができる。これにより、事件の審理手続きを効果的に推進するだけでなく、当事者の実体利益を適切にバランスとることができる。

 

専利行政案件

 

1.「(s-オルニダゾール((S)-Ornidazole)」特許権無効二つの事件【長沙市華美医薬科学技術有限公司と国家知的財産権局、南京聖和薬業有限公司の特許権無効行政紛争の二つの事件】

 

事件番号

2020)最高法知475

2020)最高法知行終476

 

事件の紹介

南京聖和公司は、特許番号が200510068478.9であり、名称が「嫌気性菌感染防止薬物の製造における(s-オルニダゾールの応用」である特許と、特許番号が200510083517.2であり、名称が「寄生虫感染防止薬物の製造における(s-オルニダゾール(s-オルニダゾールの応用」である特許の特許権者である。華美公司は2つの特許は進歩性がないとして、国家知的財産権局に無効審判請求を提出した。国家知的財産権局は2つの特許権の有効性を維持することを決定した。華美公司は不服として、北京知的財産権法院に提訴した。一審法院は、訴えらたの決定を取り消し、国家知的財産権局に再決定をすることを命じる判決を下した。国家知的財産権局、南京聖和公司はいずれも不服して控訴した。最高人民法院の二審では、化合物医薬用途特許に関する進歩性な判断の中で、従来技術が具体的且つ明確なガイドラインを提供したが否かを全面的且つ総合的に考慮しなければならないと判断した。本件において、従来技術は(s-オルニダゾールの毒性を低下させる技術的示唆を与えず、また(s-オルニダゾールがより低い毒性を有する有益な技術的効果を発見して、(s-オルニダゾールを単独で薬物にする技術的示唆を与えなかったため、両特許は進歩性を有する。従って、二つの事件とも1審判決を取り消し、華美公司の訴訟請求を棄却する判決を下した。

 

典型的な意義

両事件の審判は化合物医薬用途特許の進歩性判断基準を明確にし、医薬知的財産権の保護に力を入れ、医薬分野の革新動力を引き出す司法の導きを体現した。

 

.「計算装置における活動のカードメタファー」特許無効事件【苹果(apple)電脳貿易(上海)有限公司と中華人民共和国国家知的財産権局、高通(Qualcomm)有限公司特許権無効行政紛争案】

 

事件番号(2020)最高法知行終1.docx

 

事件の紹介

Qualcommは、特許番号が201310491586.1であり、名称が「計算装置における活動のカードメタファー」である特許の権利者である。苹果電脳貿易(上海)公司は国家知的財産権局に無効審判請求を提出し、国家知的財産権局は特許権の有効性を維持することを決定した。苹果電脳貿易上海公司は不服として、北京知的財産権法院に提訴した。一審法院はその訴訟請求を棄却する判決を下した。苹果電脳貿易上海公司は不服として控訴した。最高人民法院の二審では、技術案のいくつかの技術的特徴の間に相互依存し、相乗作用があり、全体に依存してある機能を実現し、相応の効果を奏した場合、進歩性評価において上述の相乗作用を考慮すべきだと判断した。二審の最終的に控訴を棄却し、原判決を維持する判決を下した。

 

典型的な意義

本件は国際的に有名な科学技術企業間の知的財産権紛争に関する。審判は発明創造技術への貢献に対する客観的且つ公正な評価を体現し、人民法院の知的財産権保護強化の態度と市場化法治化国際化一流ビジネス環境の構築に力を入れる努力を見せている。

 

ソース:IPRlearn

https://mp.weixin.qq.com/s/ZTRPOlFJ7Ke5-M6mD8nrjg