Foundinニュースレター2021年2月号―2020年度日韓の専利主要統計データ及び中国政策新動向

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[ 2021-07-21 ]

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2020年度日韓の専利主要統計データ及び中国政策新動向

 

※専利・・・日本における特許、実用新案、意匠の総称に相当

 

2020 年中国国内専利データ統計

 国家知識産権局は 1 月 22 日、第一四半期度定例記者会見を開き、2020 年中国における専利統計データの発表 を行った。データが示す通り、2020 年中国の主要な知的財産権の指標は想定値と一致し、知的財産権事業の発展は新 たな段階へ移行したと言える。

 

§統計データ 

  2020 年、中国国内の発明専利(特許に相当)登録件数は 53.0 万件で、2020 年末時点での中国発明専利の有効量 は 305.8 万件であった。そのうち、国内(香港・マカオ・台湾除く)発明専利件数は221.3 万件で、人口 1 万人あたりが有 する有効権利数は 15.8 件となった。 

  2020 年の実用新型専利(実用新案に相当)登録件数は 237.7 万件で、2020 年末時点での中国実用新型専利有効 量は 694.8万件となった。 

  2020 年の外観設計専利(意匠に相当)登録件数は 73.2 万件で、2020 年末時点での中国外観設計専利有効量は 218.7 万件となった。 

  2020 年、中国が受理した PCT 国際出願は 7.2 万件、そのうちの国内出願は 6.7 万件であった。2020 年、中国が受 理した再審査請求は 5.47 万件、終結案件は 4.8 万件で、前年比 28.9%の増加となった。無効宣告請求の受理数は 0.62 万件、終結案件は 0.71 万件で、前年比 34.1%増となった。

 

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中国における日本の技術分野専利登録状況

 

   2020 年、日本は中国において 28953 件の専利を登録した。これは中国全体数の 5%を占め、前年比では 4%の減 少となった。

 

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  中国における専利数最多の日本企業は三菱電機、トヨタ、キヤノン、ソニー、パナソニック、エプソン、本田、ファナッ ク。これらは主に自動車と電気機器を手がける企業である。 

 

  中国において専利取得数の比較的多い技術類別は、半導体デバイス、ビジュアル・コミュニケーション、光部品、シ ステム・器具、データ処理、電池、プリント配線、高分子化合物が含まれる。これらのジャンルでの専利数は平均 800 件 を超え、中でも半導体デバイス類では 2000 件、ビジュアル・コミュニケーション、光部品類でも 1000 件を超える。このほか登録数の多い技術類別は、エレクトログラフィ、プリンター、車用タイヤ、インピーダンス回路網・共振回路、比較的動 的な情報ストレージなどである。このうち、日本の車用タイヤ関連専利は 379 件で中国の 44%を占める。比べて中国国 内の同専利は 210 件、これはタイヤ技術上で日本が居座る地位と、それが中国の技術力をはるかに上回るものである ことを示している。プリンターにおいても日本は同様の地位を占める。 

 

  2020 年、日本が中国において最も数多く登録した専利の技術分野は、成形作業、光学と写真術、電装部品と構造 部品、一般車両、発電と送変電、ビジュアル・コミュニケーション、物質化学とナノテクノロジー、一般機械と武器、有機高 分子化合物、エンジンとポンプ、紡績・製紙と印刷、化学工業、照明・冷却加熱、包装と貯蔵・輸送、電池で、これらの分 野では平均 1000 件を上回った。 

 

  日本が最も優位性を示す分野は、光学と写真術、一般車両、電熱とプラズマ、半導体パーツ、半導体製造、電装部 品と構造部品、ビジュアル・コミュニケーション、エンジンとポンプ、半導体コンポーネント・集積回路、基本電子回路、紡 績・製紙と印刷、一般機械と武器、電池、半導体素子、データストレージである。これら分野の専利は中国専利全体の 10%~21%を占めている。 

 

  逆に日本が不得意とする分野は、コンピュータモデル/システムアーキテクチャ、コンピュータアプリケーションとソフ トウェアエンジニアリング、制御装置と演算装置(CPU)、データ送信/制御プロトコルなどである。これらの分野が中国で 占める割合は 1%に満たず、日本が中国で取得する主な特許は光学、自動車、半導体、電気技術方面であり、比較する とコンピュータ技術や通信技術などの分野は弱いことがわかる。

 

 

中国における韓国の技術分野専利登録状況 

 

  2020 年、韓国は中国において 9311 件の専利を登録した。これは中国全体数の 2%を占め、前年度の数量をわず かに下回った。 

 

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  中国における専利数最多の韓国企業はサムスン電子株式会社、現代自動車株式会社、LG エレクトロニクス、株 式会社 LG 化学、LG Display Co., Ltd.、SK ハイニックス、Samsung Display Co., Ltd.、サムスン電機,LG Innotek Co., Ltd.。これらは主に韓国の財閥傘下の電気機器・自動車企業である。

 

  中国において専利取得数の比較的多い技術類別は、半導体デバイス、データ処理、ビジュアル・コミュニケーショ ン、無線通信、デジタル情報通信、電池、光部品、システム・器具、静的ストレージ、ディスプレイコントロール装置・電気 回路、ライトコントロール関連デバイス・装置、高分子化合物などである。これらのジャンルでの専利数は平均平均 200 件を超え、中でも半導体デバイス類の専利は 1000 件余りに達した。このほかシェアが 10%を超えた技術類別は静的ス トレージ、エンジンの循環バルブ、理髪・顔/髭剃り・ネイルケア機器などがある。このうち、静的ストレージは 311 件で中 国における専利の 19%を占め、情報ストレージ技術上で韓国が一定の優位性を有することを表している。

 

  

2020 年、韓国が中国において最も数多く登録した専利の技術分野はビジュアル・コミュニケーション、光学と写真 術、半導体素子、コンピュータインタフェース、電装部品と構造部品、一般車両、無線通信ネットワーク、半導体コンポー ネント・集積回路で、これら分野での専利数量は平均 500 件を上回った。

 

  

韓国が最も優位性を示す分野は情報ストレージ、半導体コンポーネント・集積回路、半導体素子、コンピュータイン タフェース、ビジュアル・コミュニケーション、ディスプレイ・表示用品と音響学、電池、光学と写真術である。これらの分野 での中国におけるシェアは 15%~5%である。

 

  

逆に韓国が不得意とする分野は、コンピュータモデル/システムアーキテクチャ、コンピュータアプリケーションとソフ トウェアエンジニアリング、農業と食品、建築と鉱業、材料試験、包装と貯蔵・輸送、データ識別、鉄道/船舶/飛行機で、 これらの分野での中国におけるシェアは 0.6%に満たない。韓国は典型的な科学革新型国家であり、その専利は主に半 導体、光学、ディスプレイ技術など新興技術方面に分布する。但し AI、コンピュータソフトウェア、農業技術などの方面で は比較的劣勢である。

 

 

§中国の主要な動向 

 

  ① 知的財産権審査の質と効率のさらなる向上 2020 年、中国では知財権審査のクオリティ・効率向上作業が着実に進められ、審査周期が高価値専利は 14 か月、発 明専利は平均 20 か月、商標登録審査周期は平均 4 か月までと、それぞれ短縮された。


  ② 国内発明専利の構成がさらに改善され、質も向上 2020 年末までの中国国内の有効発明専利中、権利の存続期間が 10 年を超えるものが 28.1 万件にのぼり、総数に占 める割合が 12.3%、前年比 1.0 パーセントポイントの増加となった。革新企業の地位がさらに固められ、国内の有効発明 専利所有企業は計 24.6 万社、前年比 3.3 万社の増加となった。このうちハイテク企業は 10.5 万社、所有する有効発明 専利は 92.2 万件で、これは国内企業の有効発明専利所有量の6割近くを占めている。

   

③ 企業の海外における知財権配置能力が増大 2020 年、中国国内申請人が提出した PCT 国際出願数は前年比 17.9%の増加、同じく中国国内申請人が提出したマドプ ロ出願は前年比 16.1%の増加となった。関連統計データによると 2020 年 1~11 月間の中国知財権使用料輸出額は 74.7 憶ドル、前年比 24.2%の増加であり、中国企業が海外の知財権配置能力をさらに高めていることを表している。  

 

  ④ 「一帯一路」沿線国の中国における発展が更に確実に 2020 年、「一帯一路」沿線国は中国における専利配置の強度を増加させ、その中国における発明専利件数は 2.3 万件、 前年比 3.9%増で諸外国の中国における前年比を上回った。このうちシンガポールの前年比成長率は 21.0%、韓国の前 年比成長率は 4.4%であった。

 

 

§専利関連政策最新情報

 

  1 月 27 日、中国国家知識産権局は《専利出願行為の一層厳格な規範化に関する通知》を公布し、この中で6タイプ の「非正常」な専利出願に対し新しい処置対策を取り決めた。 

 

   ➢ 「非正常」な専利出願行為 6 種

 

   1、《専利出願行為の規範化に関する若干の規定》(国家知識産権局第 75 号局令)の第三条に定める 6 つのケー ス 

   2、企業・団体等または個人が故意に関連しあう専利出願を分散して行う行為 

   3、企業・団体等または個人がその研究開発能力と顕著に乖離する専利を出願する行為 

   4、企業・団体等または個人が専利出願を異常に転売する行為 

   5、企業・団体等または個人が行う専利出願のうち、複雑な構成を簡単な機能として実現する技術的解決手段を、 通例の或いは簡単な特徴の組み合わせ・繰り返しなどにより実現しようとする、明らかに技術改善の常理に合致しない 行為。 

   6、その他、民法典に規定する信義誠実の原則に違反する行為、専利法関連規定に符合しない行為、及び専利出 願の管理における秩序を乱す行為。 上記における「企業・団体等または個人」は同一の自然人、法人、その他組織と同一の実質的支配者を含む。 

 

   ➢ 「非正常」な専利出願に対する処置処分

 

   1、専利費用の減額を行わない。すでに減額したものについては不足分を追加納付する。情状が重い場合、以降 5 年以内の出願について専利費用の減額を行わない。 

   2、国家知識産権局公式ホームページ及び《中国知識産権報》にて情報を公開する。 

   3、当該出願を専利出願数に統計しない。 

   4、国家知識産権示範と優位性企業への申請、及び知的財産権保護センター登録資格、及び中国専利奨への申 請、また審査・賞を受ける権利を取り消す。 

   5、助成または奨励を行わない。すでに助成または奨励が行われている場合には、遡ってこれを全額または一部返 金する。情状が重い場合、以降 5 年以内助成または奨励を行わない。助成・奨励を不正に受給し犯罪構成の嫌疑を受 けた場合、法に基づき関連機関に引き渡し刑事責任を追及する。 

   6、各ランクの地方知識産権部門は当該の部類の出願代理について、専利業務の秩序を深刻に混乱させた専利代 理機構に対し確認した状況に応じて法に基づき調査・処分の強度を強める。中華全国専利代理人協会は当該の部類の 出願に従事・関連した専利代理機構及び弁理士に対し業界の自主規制措置を講じる。

 

  

この政策は中国の知的財産権誘致大国から創造大国への転換を的確に推進すること、量の追及から質の向上へ の転換及びより高度な発展への要求を厳格に実行すること、専利出願の行為をより一層規範化すること、専利出願の質 を高めること、及びイノベーションを目的としない非正常な専利出願の除去・不保護を主要な目的とするものである。

 

    (出典:国家知識産権局 陳立新科学網ブログ)